<映画>「ラルジャン」

こんなに厳しい映画をぼくは他に知らない。

原作はトルストイの「贋札」。
二人の少年がふとしたイタズラでニセ札を使う。掴まされた店主は、今度はそれを主人公の青年に掴ませる。青年はニセ札とは知らず使ってしまい逮捕される。これで青年の人生は狂ってしまうのだ。
青年の幼い娘は病死し、妻は刑務所に入ったままの青年を捨ててしまう。自暴自棄になった青年は出所後、強盗の手伝いをして再逮捕。いよいよ世の中を恨むようになった青年は、強盗殺人を繰り返す……

ユーモアなど一切なし。ブレッソンの視点は相変わらず高く、容赦ない。対象を「見下ろす」のではなく「見据える」目。
そして「スリ」同様、この映画でも主人公は悪になりきれない。「罪と罰」のラスコリニコフのように最後には自白する。ドストエフスキーの小説にカンジる「救い」に通じるものが、ここには確かにある。

映画表現というものからゼイ肉をすべて取り払ったらこうなった、という見事な映画。もっとも、ゼイ肉の部分が恋しくなることだってあるんだけどね。

次は「じゃん」で始まる映画です。