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お邪魔します。 |
お |
やあ、いらっしゃい。さあ、どうぞどうぞ、ずっと奥の方へ。 |
左 |
ずっと奥ったって、5歩もないじゃないか。 |
お |
コーヒーでいいかな。 |
左 |
あれ? 奥さんは? 実家に帰ってるの? |
お |
なんでだよ。仕事に出てるだけだよ。 |
左 |
働かせてるのか。苦労させてるんだね。 |
お |
来て早々憎まれ口をきくこともないだろう。ほらよ、コーヒー。 |
左 |
で、出来たの、企画書? |
お |
おう、まだだ。 |
左 |
まだ? じゃ何のために呼んだんだよ。書かないぞ、もう。 |
お |
あの「アイコク」ね、ちょっと待とう。 |
左 |
だって君、去年のライブの最後に通知出したんじゃないのか。 |
お |
出した。出したんだけどね。3人芝居だろ。どう考えてもお客さん呼べそうにないんだよ。内容も地味だし。 |
左 |
じゃどうするんだよ。やらないのか。 |
お |
やる。別のをやる。 |
左 |
別の? 別のってなんだ? |
お |
オペラだ。 |
左 |
オペラ? 君、歌うのか? |
お |
違う。オペラを元ネタにした芝居だよ。 |
左 |
何だ? 「カルメン」か? |
お |
ああ、「カルメン」もいいね。でもそうじゃない。 |
左 |
「アイーダ」か? |
お |
そうじゃない。 |
左 |
「ニーベルングの指輪」か? |
お |
何時間ものになると思ってるんだ。そうじゃないよ。 |
左 |
じゃなんだよ。 |
お |
まあ、これ以上は伏せとこう。 |
左 |
どんな話なんだよ。 |
お |
一言で言えば、青春もの。 |
左 |
青春もの? 君が? |
お |
正確に言えば、いいトシこいてまだずうずうしく青春真っ只中みたいな顔してる奴らの話。 |
左 |
モラトリアム物か? |
お |
そう言ってもいいね。 |
左 |
君自身の話じゃないのか。 |
お |
・・・・そう言ってもいいね。まあ、そう言う意味では、ぼくの芝居はいつでもぼく自身の話だね。 |
左 |
恋愛は? |
お |
ある。切ないぞ。 |
左 |
それも君自身の話か? |
お |
・・・・まあ、ちょっと違うかな。こんな話にしたいんだけどね・・・・ |
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(以下、話は続くけど、これ以上はナイショ。もうしばらくお待ち下さい) |