第4回  歌う男

俳優・柏木史郎(おの)が初めてミュージカルに挑戦! 自ら企画した「モンテ・クリスト伯」に出資を願うため、投資家たち(観客)を集めたものの、共演者も演出家も決まっていない、曲もできていない、あるのは溢れるほどの情熱だけ。

投資家たちを前に、柏木はたった一人で試演会を始める。しかし、柏木はこれまで人前で歌ったことが一度もなかったのだ……


開演前のながばなし

笑われるのは承知の上で書いちゃうけど、ぼくは昔、ロック歌手になりたかったのだ。そこのあなた、笑い過ぎだ。

若い人は知らないかもしれないけど、20数年前、グラム・ロックというものがあった。今で言うビジュアル系のハシリである。中でも最高だったのはデビッド・ボウイというひとで、バイ・セクシュアルで宇宙人みたいでカッコよくて、とにかく、ぼくの憧れだった。ぼくも、もうちょっと背が高くて、長髪が似合って、ヒゲが薄くて(いや、昔は今みたいに濃くなかったんだけど)、なおかつ楽器が弾けて、音感とリズム感があれば、デビッド・ボウイみたいな歌手になりたいと思っていたのだが、しょうがない。ひとには向き不向きがあるものだ。

歌手を断念し、役者を目指したぼくだが、その後、ミュージカルなんかやったりして、舞台で歌うことになるとは思わなかった。歌手を断念したのは正解だったなと、つくづく思った。それでも、まだ毎年ミュージカルに出ているのである。厚顔無恥なんて言われそうだけど、本当は結構恥ずかしいのですよ。今回も恥ずかしがって歌ってますので、どうかご容赦下さい。

今回、本編で取り上げるため、「モンテ・クリスト伯」を通して読んだ。小学生時代、子供向けの「厳窟王」を読んで以来20数年ぶりだったけど、これが面白いのである。上演時間の都合などで、残念ながら、面白いエピソードをかなり割愛しなくてはならなかった。興味のある方はご一読をお薦めします。岩波文庫で、全7巻です。

「モンテ・クリスト伯」ミュージカル化というのは、あくまで今回のライブのためにデッチあげた企画なんだけど、まんざらでもないのではないかという気がする。この話を耳にしたアンドリュー・ロイド=ウェバーあたりから「その企画を売ってくれ」なんて電話がかかってこないかな、なんて、ちょっと本気で思ってたりする。今日現在、まだ電話はかかってない。

では、開演までもうしばらくお待ち下さい。

おのまさし