第8回  売る男

秘密のオーディション会場でオークションが開かれている。出品されているのは、怪盗ワンダー・キッド(おの)が世界を股にかけて盗んだ品ばかり。そしてオークションを行なっているのが当のワンダー・キッドであった。 居並ぶ競売人(観客)を尻目に、すべての品を競り落とす客がいた。彼はただのコレクターなのか? それとも他に狙いがあるのか? そして、ワンダー・キッドがこのオークションを行う真の目的は?


開演前のながばなし

役者などという、実体のないモノを売る仕事をしていると、お店とかやってる人を見て(またはそういう人の話を本で読んで)「いいなあ」と思うことがある。

「街角」なんて映画があった。街角の小さな雑貨屋で起こる出来事を描いたドラマで、2年ぐらい前にミュージカルにもなったから、ご存じの方もいるのではないだろうか。ああいう話って、内容より何より、まず雰囲気に惹かれてしまう。意外に思われるかも知れないけど、ぼくはひそかに、お店を持ちたいと思っているのだ。意外ですか?

昔は、本屋をやりたいとか、レコード屋(呼び方が古いね)をやりたいとか思ってたけど、今一番やりたいのは、藤子不二雄の「魔太郎が来る!」に出てきた「怪奇や」みたいな店だ。この店はホラーグッズの専門店で、オモチャだけでなく、ホントに呪術で使う道具とかもあったりして、店主は普段から不気味なマスクをつけてたりして(でも結構やさしいオジサンで)、まあすごい店だった。ああいうお店をやってみたいんだけどなあ。でもあの店主、素顔はどんな顔だったのかなあ。

さて、今回はオークションをやりますので、カタログ代わりに、ここに品名を書いておきます。

No.1 奇跡の指輪  No.2 ギルギットのパイプ  No.3 天狗の隠れ蓑

このうち、「ギルギットのパイプ」は、北杜夫「怪盗ジバコ」の1エピソード「猿のパイプ」に登場する品をお借りしました。ここにお断りしておきます。

それでは、開演までもうしばらくお待ち下さい。

おのまさし