渡り鳥は都の夢を見るか?

2004.6.24

ワンダーランド・ラボ第2回公演「漂鳥の儚」が無事幕を閉じました。ご覧下さった皆様、ホントにありがとうございました。

ワンダーランド・ラボとは、さいふうめいさん主宰のオフィス・ワンダーランドが、若い役者に試練と活躍の場を与えようという趣旨の公演である。昨年の「賭博師 梟」の時は、メインどこを占めているのが、20代の一世はまあいいとして、渡辺克己であったりぼくであったりと、あんまり若手公演というカンジでもなかったのだが、今回は中心メンバーが20代半ばの、正真正銘の(?)若手公演となった。本作品の初演は2001年の東京芸術劇場小ホール2、「焼跡悪漢演劇シリーズ」の第4作目にあたり、今回は再演となる。

今回はもう、ハッキリとサポート役である。出てる時間より稽古を見てる時間の方がはるかに長い。しぜんと、いろいろアドバイスする側に回った。
昔からぼくは「共演者の芝居に口出しない」というポリシーを持っていた。何よりまず、それは演出家の仕事であって、同じ立場の役者が差し出口をきくべきでないと思ったし、たとえば演出家とぼくとで意見が異なった場合、どちらの言うことを聞くべきかと言えば、これは演出家の方に決まっているのであって、だったらぼくが何か言ったって意味ないじゃないかと思ったのだ。
ぼくもトシをとったということなのだろうか。今回のケイコではわりと自然に、演出家の言葉を補足するように若手にアドバイスしている自分がいた。我ながら、ちょっと意外であった。どんなことを言ったかというと、それはこんなこと。

「まず考えるべきなのは、カッコイイ芝居をやるということ。カッコつけた芝居じゃなくてカッコイイ芝居をやるべきだ。どうするか迷った時は、カッコよく見える芝居を選べば正解だ」。

作家のさいさんは、ご存知の方も多いと思うけど、人気マンガ「勝負師伝説 哲也」の原作をやっている人である。だから、というわけでもないのだろうけど、ワンダーランドの芝居も相当劇画チックである。ヘンにリアルな演技とかもってきたってしょうがないのだ。役者に何より求められるのは「なりきる」ことなのである。中途ハンパなテレた芝居はスッパリ捨てて、劇画の主人公を演じるべきなのだ。
ここらへん、みんなどれくらいわかってたかな。どうもテレながらやってるみたいなとこがあったからね。ある出演者の人は、観に来た役者仲間に
「なんでみんなあんなに正面向いてセリフ言うの? どこ見てんの?」
などと心ないことを言われて結構傷ついていたようだ。俺がこんなこと言われたらすかさずこう言い返すね。
「壁を見てしゃべってんだよ! 第4の壁だよ! 知らないのか?」
そもそも、役者でありながらそういう心ない批評をするような愛のないヤツは、愛のない芝居しか出来ないヤツなんだから、何言われても気にすることはないと、ここでも俺はアドバイスするのを忘れなかった。結構サポートしてたじゃないか。

このへんで自分の役について。
ぼくの役はマクドウェル横浜地区司令官。当時横浜で一番エラかった人であり、生粋のアメリカ人である。日系2世のジェファーソン大尉(一世)との差を出すために金髪にした。克己さんに「マクドウェルはWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)ですかね?」と聞かれたけど、やはりそうですね。決して悪人ではなく、それどころか、かなりの理想主義者で、人当たりもよいのだけど、根っ子には白人至上主義がある、という人にした。陽気で、無邪気で、貴族的。ヒラメキと思いつきで物事を決める「アメリカの長島茂雄」というイメージだったのだけど、皆さんどう思ったろうか。
最初の出番は中華街の店で、中国人の飛龍(フェイロン)とも日本人のフダコとも同じ言葉でしゃべっている。何人かのお客さんに指摘されたことでもあるし、何より自分自身常々思ってたことなのだけど「一体この人たちは何語でしゃべっているのだろう?」というギモンは、まあ当然出てくるよね。最初は日本語で、最後の一世と二人のシーンは英語でしゃべってるつもりだったのだけど、おわかりいただけたでしょうか?
マッカーサーのパロディみたいな雰囲気を持った役だから、パイプを小道具にしてみたのだが(初演時はコーンパイプだったらしいけど、今回の台本では特にパイプをくわえているという設定はなかったのだが)、またこのパイプが結構クセモノで、しょっちゅう火が消えるのだ。一世の顔に煙を吹きかけるとこなんか、結局うまくいったのは初日だけだった。
そして(もう終わったから書いちゃうけど)このシーンの直後、マクドウェルはジェファーソンに撃ち殺されちゃうのである。今回ちょっとしたコダワリがあって、それは「目あいたまま死のう」というものであった。最前列のお客さんには結構気になっていたようで、ずっとこっちばかり見ていた人もいた。全8ステージでいっぺんだけまばたきしてしまったのがなんとも残念であった。

てなことで、今回のラボ公演も好評のうちに幕を閉じました。ご覧下さった皆様、ホントにありがとうございました。
そして、おのまさしと前田一世は休む間もなく「ダンパチ」の稽古に参加しています。なんか相当アツクルしい企画になりそうです。暑いの苦手なんだよなあ。
また、今回は若手メンバーとショーGEKIお嬢による「スリル」もあります。HPでの企画も始まり、いよいよ盛り上がってきたカンジです。皆様、この夏もどうぞおつきあいくださいませ。ではまた。