4日間、世界六周

2007.4.5

おのまさしあたあ「80日間世界一周」が、去る4月1日、全6ステージの幕を無事閉じました。ご覧くださった皆様、ホントにありがとうございました。残念ながらご覧いただけなかった皆様、ホントに惜しいことしましたね、オモシロかったのに。次なる機会はゼヒご覧下さい。

この「80日間〜」はかつて、ぼくの敬愛するオーソン・ウェルズがコール・ポーターの音楽を得て上演し、ブレヒトに絶賛された(とウェルズが自分で言っている)のだけど、このことを知った時にはまだ、自分でやろうなどとは思ってなかった。
いつ思ったか。一昨年の「巖窟王」以来、小空間での芝居のオモシロさを再認識し、次に小空間でやるなら、逆にできるだけ広いシーンが多く、移動が多く、登場人物が多い芝居をやってやろうと思った時、この作品がアタマに浮かんだのである。

原作は今読むと、冒険小説としてはやや地味で、むしろユーモア小説の趣があるので、とにかくコミカルでアップテンポな娯楽モノにしようというのが狙いだった。だから、ギャグの大半は台本の段階で入っていた。脚本の左門ヒサオくんも、「巖窟王」の時より書きやすそうだったな。
日付変更線のギャグは、かなり初期に思いついたものである。原作を読んで誰もが不自然にカンジると思われるのが「フィリアス・フォッグほど計画力のある男が、日付変更線のことを忘れるだろうか」という点だろう。ならば逆にこの点を強調しようと思ったのだ。ヴィクター・ヤングの名曲「アラウンド・ザ・ワールド」(映画のテーマ曲)はどこかでいっぺんだけ使ってやろうと思っていたので、ここで使うことにした。映画はハッキリ言って感心しないデキだと思うのだが、この曲はやっぱり名曲だと思う。

台本作りに先立ち、まずアタマを悩ませたのがキャスティングの問題だった。
メイン3人(フォッグ、パスパルトゥ、アウーダ)は一役のみ、フィックス刑事役を含む残り3人に数役をやってもらうということは決めていたのだが、フィックス以外の2人には全編を通しての大きな役というのがない。クラウンと言えば聞こえはいいけど、言ってみればアンサンブルである。こういうのって、結構お願いしづらい役どころではあるのですよ。
ぼく、マリ、リッキー(林力)と羽田さん(羽田勝博)まではすぐ決まったのだが、クラウン2人はチョット悩んだ。インドのシーンで登場する象使いの少年役もあることから、一人はショーGEKIを退団したばかりのもっちー(望月文)にお願いしようと決め、幸い承諾を得たが、もう一人が決まらないまま去年の「ギャンブリング」が終わった。そこで、「ギャンブリング」で成長著しかったサトシ(山本諭)はどうかと思ったのだ(これにはショーGEKIのアスカのサゼスチョンもあった)。割とベストなキャスティングだったと思う。とにかく、おのまさしあたあを始めてキャスティングで失敗したことは一度もない、といのがぼくの自慢である。

稽古を始めて1週間頃、今回最大の課題であったインディアンの襲撃シーンをやってみてかなり不安になったので、みんなの前で言った。「今回は、なりきってやりきれば最高にオモシロイが、チョットでもテレたら最後、学芸会だ」まさにそういう公演だったと思う。演出にも勇気が必要だったけど、役者のみんなも勇気が要ったろうなあ。

今回の演出の新味は、なんといっても「香り」である。小空間でなければ使えず、なおかつフンイキを変えられるアイテムということで、かなり初期にヒラメいたのであった。海の香りとして焼き海苔を、インドの香りとして(お店の)カレーを使おうと言うのは決めていたのだったが、中国と日本でこれは、というのが思いつかず、結局お香で統一してしまった。まあ、展開の速さをとるかバリエーションをとるかの違いで、今回はあれでよかったのではないだろうか。

映像を使う、というのも初めから決めていた。セットも何もない狭い空間で、場所が変わるとか移動しているとかいうカンジを出すには、映像に頼らざるを得ないだろうと思ったのだ。ただ、実写を持ってきたって芝居とは水と油だから(しかも芝居が負けちゃうから)、ものすごく原始的な、線画だけのアニメーション(パラパラ漫画みたいなヤツ)を使ってはどうかと思ったのである。
ショーGEKIで映像を担当している高橋利行くんに話を持っていったが、コトはそう簡単ではなかったらしい。結局、高橋くんの友人でアニメを作っている上(うえ)さんに作ってもらったのだが、当初予定してたチープなものとは違うリッパなものが出来上がってきてオドロいたなあ。
試みは成功したと言ってよいだろう。特に好評だったのはサーカスの人間梯子。苦肉の策だったのだが、拍手までもらったもんなあ。いやよかったよかった。上さんありがとう。

そして音楽。今回も山本ヒロアキくんにお願いした。映像と同様、何もない空間でフンイキを変えてくれるのが音楽だと思うが、ピアノとピアニカ(メロディカ?)を併用してかなりの効果を生んでくれた。
特に今回はアウーダの歌が好評であった。最初にメロディだけ聞いた時は、美空ひばりか上々颱風のようで、ぼくは気に入ったのだがマリはチョット戸惑っていたのだ。それが伴奏がつくとああなるとはねえ。いや見事でした。
スター・ウォーズ、スティーヴィー・ワンダー、ビートルズは台本にあったのだが、アヘン窟での「太陽にほえろ!」は稽古中に生まれたネタ。ジェネレーションギャップがあるかなと思ったのだがそうでもなかった。しかしまあ、ネタとして古いには違いないが。

ということで今年のおのまさしあたあは終わり。おかげさまで大好評をいただきました。「『巖窟王』より今回の方が好き」という人も結構いて、ぼくとしてはまあ、少しステップアップできたのではないかと思う。
COREDOという空間での芝居にも慣れてきたし、もうチョット極めてみたい気もする。次はなんだろうな。出演者数は減らして、登場人物はさらに増やして、となると、行き着くところはやっぱ「一人芝居・三国志」なのかなあ。

ではまた。次はたぶん夏祭りの後で。