バカ役者、スパークする!

2008.3.3

おのまさしあたあ「三國志」が3日間4ステージの幕を閉じました。ご覧くださった皆様、見には来られなかったけれど励ましの声をくださった皆様、ホントにありがとうございました。

パンフレットにも書いたけど、こんな芝居(という言い方もなんだけど)去年の今頃はまったくやる気はなかったのだ。
3年前に8人で「巖窟王」、去年はさらに2人少ない6人で「80日間世界一周」と、登場人物のやたら多い作品を少人数でやってきて、その「80日間」のパンフに「この上はもう『一人芝居・三国志』しかないだろう」なんてコトを冗談半分(じゃないな、完全な冗談だな)で書いたら、「次は一人で『三国志』ですか!」なんて早呑み込みする人が出てきた。その時はあわてて否定したのだけど、その後、「80日間」の2日目を見てくれた女優Nさん(ぼくの敬愛する人)に「役者おのまさしがラクしてるんじゃない?もっとあなたがジタバタしてるところが見たい。あなたってもっとバカ役者だったでしょ?」なんてコトを言われ、その時から「一人芝居・三国志」はまったくの冗談ではなくなったのだった。(そうなんですよ中津川さん。あっ名前出しちゃった)
翌晩も終演後にコレドで飲んでて、お客さんに「そうですか、次は三国志ですか」なんて言われて「やりませんよ。そもそもあれだけの数のキャラクター、どうやって演じ分けるんですか」と逆に聞いたりした。その約一瞬後、その自分で出した問いにぼくは自分で答えていたのだ。

「ヒゲを使えば演じ分けられるんじゃないだろうか?」

「巖窟王」の時もそうだったけど、「できるわきゃない」が「できるかもしれない」に変わった瞬間というのが、ぼくにとって芝居が生まれた瞬間ということになるのだろう。「一人芝居・三国志」はこの時すでに産声をあげていたのだ。
全体を大学の講義仕立てにし、老教授(斧當郎という名前でした)が一人で全登場人物を演じる、という設定を思いついたのは、それから程なくしてのこと。かくして本公演は実現に向け本格的に動き出してしまったのだった。

左門くんに台本を年末までにあげてもらい(遅いんだよいつもいつも)、正月明けに稽古開始、したのだけど、なにしろセリフの分量がハンパじゃない。すっかりアタマ(とカラダ)に入るまで三週間かかった。
最後に回したのがキャラクターの演じ分けである。張飛とか孔明とかはやりやすいんだけど(張飛がやりやすいというのは意外だったけど、俺ああいう単純な奴が好きなんだな)、最後まで決まらなかったのは曹操のキャラであった。結局、昔やった「大逃亡」の源頼朝みたいな愉快犯的なキャラにしたのだが、これが予想外に人気を得ることができて(一番人気だった)ホッとした。それにしても俺ってやっぱ引き出しが少ないんだな。

左門くんにもらった台本は「80日間」より短いもので、これなら2時間10分くらいでおさまるかなと思ってたらとんでもなかった。初めて通したら3時間! 蒼くなって、そのまま近くのファミレスで台本のカットを行い、オープニング明けの2シーンを丸々切ることにした。以前から妻に「ここいらないんじゃない?」と言われてた部分なのだが、ぼくはどうも話の入口に時間をかける癖があるようだ。特にこういう長くて入り組んだ話ほど、入口をしっかり作らないと、話を知らないお客さんはついて来られなくなってしまうと思って入れてたシーンだったのだが、まあ切って正解だったのだろうな。

「巖窟王」「80日間」では山本くんのピアノ&ピアニカに大活躍してもらったが、今回はその手は使えない。アリモノでいくことは最初から決めていた。ただ、なんでもアリというのじゃなく、一つだけコダワったことがあった。それは「三國志」にちなんで「トリオの曲であること」。別に数秘術とかを信じてるワケじゃないけど、こういう誰もわからないようなささいなコダワリからぼくの芝居は出来ていると思うので、ここだけはコダワった。ジャズトリオとか、ウェイラーズのようなレゲエのコーラスまで使うことを考えたが、結局大半を占めたのは70年代ハードロックトリオの曲であった。ほとんどがチャンバラのシーンだったのでこういうセレクトになったのだけど、選曲に関しては悪くなかったんじゃないかと自画自賛している。音響オペをやってもらった妻にとっては今までほとんど聞いたことのないような騒々しい曲ばかりで、チョット悪いことしたな。なお、一人チャンバラは自分で殺陣をつけた。殺陣師デビューが一人チャンバラというのもいかがなものか。

というワケで、4年前の「呪う男」以来の一人舞台だったのだけど、開演前の緊張たるや、かつて経験したことがないほどのモノであった。心臓によくない芝居だったな、これは。
とはいえ、ぼくはこの「三國志」をこれ一回で終わらせるつもりはないのだ。老教授の一人芝居という設定にしたのもそのためで、この先さらに練り上げて、再演を重ねていこうと思っているのだ。中村伸郎の「授業」か山本安英の「夕鶴」ぐらいの舞台に出来るだろうか(古い上に大それたこと言ってるな)。

ではまた。次は多分ショーGEKI夏祭りのあとで。