海より還る

2009.9.10

ネオゼネレイター・プロジェクト「THE DEEP」が、おかげさまで去る9月6日、全7ステージの幕を閉じました。

ご覧くださった皆様、ホントにありがとうございました。惜しくも見られなかったという皆様、11月の「大逃亡」でゼヒお会いしましょう。

今回の「THE DEEP」については、昨年の「DESERT MOON」の時点で主宰の大西さんから「次は深海SFホラーですよ」と聞いていて、早々に出演を決めてしまったのだった。砂に覆われた世界も好きだが、海も好きなのである。
しかし海ものは舞台ではムズカシく、俺は自分ではナカナカ手を出す気になれないのである。その割には「巖窟王」も「80日間世界一周」も海のシーンがあるじゃないか!なんてツッコまれそうだけど、あれは決して「海モノ」じゃないし、何よりああいうスタイルだからやれたことだ。
なんといっても最大の問題は「舞台は揺れない(地震でも起きない限り)」ということと、舞台で水を出すことは非常にムズカシイからである。劇場は普通、とにかく水をイヤがるんですね。

今回の舞台も、最初の企画の段階では「窓の外に大きな水槽を置く!」ということだったのだが、さすがにそれは流れ(そりゃ流れるだろう)、直接には水の見えないセットにすることで落ち着いた。とはいえ、ご覧になった方は当然知ってるだろうけど、あのセットである。一見二階建てだけど、実質は見えない部分(上層部と下層部)があるので、実質四層構造のセットが出来てしまった。オモシロイのは公演期間中に、下北の他の劇場で公演をしてた美術スタッフの人たちが劇小に「ちょっとセット見せて」と言って次々にやって来たことである。やっぱ、ああいうことやると気になるだろうな。

今回、大西さんがまずコダワったのが「最初の登場は客席の上から」ということ。「DESERT MOON」で初めてあの空間を使ってみて思いついたのだろう。
「劇」小劇場というところをご存知の方ならわかると思うけど、あの客席の上には倉庫があるだけで、出入り口は一箇所のみ。つまり、初めからあそこに待機してる役者は、会場時間になってお客さんが入り始めたら、もうどこにも行けないワケである。暗い中で30分間、6人の出演者(含む俺)が息を殺す様は、さらがら船底にこもったアジアの密航者のようだった、とは舞監の八着さんの弁。

セットに水を使えなければ小道具で、というわけで、舞台一隅には20リットルの水入りポリタンクがいくつも置かれ、のっとられた人々が仲間を増やす手段も水入りボトルと漏斗(笑)である。ボトルと漏斗を持って襲ってくる姿というのは、それはもちろんコワくもあるんだけど、でもやっぱ笑っちゃうよなあ。ここらへんが大西さんのB級魂と言うべきか。

俺の役は、最初の設定では「前科多数」とあった。金次第でなんでもやる荒くれ男、というイメージが、大西さんの中にはあったらしく、「『ジョーズ』のクイント(ロバート・ショー)みたいなカンジですかね」と言われて、俺はこの時「よし、今回の役作りは『ロバート・ショー』だ!」と決めてしまったのである。ヒゲとモミアゲを伸ばし、潮ざらしになったキャップとダンガリーのシャツという、あのクイントの格好になったわけで、役の中身は完全にあとからついてきたようなもんである。俺はホントに外見優先の役者なんだなあとしみじみ思った。ちなみに、初期設定は本編には反映されなかったのだけど。
シブく作ろうと思ったのだったがモロモロがそうさせてくれなかった。モロモロとは、ストーリー展開であったり、大西さんの演出であったりしたわけだが(そうだよ、あれみんな演出なんだよ)、まあでもオモシロくなったからいいか。
最後にビデオカメラ二つ抱えて登場した時はウケたな。未来演劇人シアターのみんなが手伝ってくれたので、あそこはみんなをタノシませようと「ハリマオ」のイメージでやったのであった(石塚くんに「ハリマオ馬鹿にしないでください」って言われたけど)。そしてまたあの登場の際の音楽! タクヘイさんが大西さんの反対を押し切ってああなったらしいけど、やっぱ、あそこはああだよな、うん。「SONYのナイトショット搭載機……」というセリフには、見に来てたSONY社員の人が大喜びしてたそうである。

かくして「THE DEEP」は「DESERT MOON」以上の好評をもって迎えられたのであった。いやータノシかった。「ドラゴン」の時もそうだったけど、ああいう立体的なセットって遊び場みたいなもんだからね。たっぷりアソばせてもらいました(トランシーバーで舞台外と中で会話する、なんてのもタノシかったなあ)。
大西さん、今回もすばらしかったスタッフの皆さん、石塚くん、おちよと初共演の皆さん、お疲れ様でした。そして再び、ご来場下さった皆様、ありがとうございました。
こういう、70年代B級SF映画みたいな雰囲気を持った芝居をやるとこ、他にないんじゃないかなあ。それだけでもやる意義は十分あると思うのだ。大西さん、今後もB級魂全開で突っ走ってください。また出していただけたらウレシイです。

ではまた。次は14年ぶりの「大逃亡」のあとで。