思い出にひたる間も……少しはあります

2009.11.22

ショーGEKI十周年記念公演「大逃亡――義経と弁慶――」が、おかげさまでさる11月15日、満員御礼のうちに全7ステージの幕を閉じました。
ご覧下さった皆様、ホントにありがとうございました。特に千穐楽のカーテンコール二回というのは、チョット忘れてたカンゲキでした。残念ながらご覧いただけなかった皆様、来年どこかの劇場でお会いしたいと思います。

ご存知の方も多いと思うけど、この「大逃亡」という芝居は14年前の1995年にツールドフォースが上演し、今回は再演となる。
十周年記念公演として、主宰であり演出家である羽広がなぜこの作品を選んだかといえば、演出家としてはまだまだやり残したことの多い作品だと思ったからだろうし、主宰としては、現在のショーGEKIメンバーが中心となって――今までの大魔王公演のように多彩なゲストに助けられてではない――公演ができるのではないかと思ってであろう。
というワケで、今回は(今回も)初演時のことと対比させて書いてみようと思う。

まずは14年前の話。
そもそもの始まりは、主宰羽広がとにかくチャンバラものの芝居をやりたかったということであった。まず候補に上がったのは「八犬伝」だったのだが、その年は折悪しくどこでもここでも「八犬伝」がやられてしまっていた。「八犬伝」は来年に回すとして、さてじゃあ何をやるかという話になった時、猿之助の「義経千本桜」が好きだったぼくは「『千本桜』とか『勧進帳』とか、歌舞伎のオモシロイとこだけ集めた義経弁慶モノはどうかな?」と提案してそれが通ったのだった。出来上がった台本は歌舞伎とは全然違うモノになったワケだが。
当時の我々としては大規模な劇場である東京芸術劇場(小ホールだけど)への初進出、加えて初のチャンバラもの、さらに歌あり踊りありのテンコ盛りということで、幕開け直前の我々はかなりキャパシティいっぱいいっぱいだった。
結果は予想を上回る大ウケ。カーテンコール二回というのもこの時初めて経験した(今回の千穐楽ダブルコールでその時のことを思い出した)。
いろんな人との出会いもあった。tsumazuki no ishi主宰の寺十吾(じつなしさとる)さん、この後ずっと振付をお願いすることになる長谷川麻里子さん、そして、当時まだ学生だったうっちいとあすか。この時はまさか、一緒に劇団を十年もやることになるなんて思いもしなかったね。

そしてその14年後の今回。
初演時との最大の違いといえば、歌が減ったことだろう。5曲あった歌は、徳子歌う「ほうき星の歌」と「いい国作ろう」の2曲のみとなった。オープニング開けの景時の口上に続いて歌われる政子の演歌も、王様ゲーム(実際やったんだよ劇中に)の歌もなくなったことで、バラエティ色はかなり鳴りを潜めることとなった。大魔王名物:全員大合唱の「いい国作ろう」(初参加の榎本さん作曲)だって、初演時はラップだったものね。
また、今回は踊りを入れるかどうかも演出家は最後まで迷ったそうだ。スピード感を取るかハナヤカさを取るかで、最後はハナヤカさを取ったということなのだろうが、正解だったんじゃないだろうか。

ぼくの役はやはりというか、初演時と同じ源頼朝。多少のセリフの違いはあってもまあマイナーチェンジだろうなぐらいに思っていたらとんでもなかった。
そもそも初演時の頼朝に対する演出は「絶対にフェロモンが必要な役だ」というものだった。恐妻家の魔王だから、役作りにライオンを取り入れたりしたのだ(おお、メソード演技だ!)。それが今回は「人間をコレクションするオタク。コンプレックスのカタマリ。セックスの匂いのしない男」である。前と180度違うとは言わないが、要は全然違うということだ。
演出が変わったのは頼朝に対してだけではない。全登場人物が、一言でいえば「深く」なった。みんながみんな、なんらかの業を背負って生きてる人たちになった。あの清楚な静御前でさえ業を背負わされた(例外は富樫ぐらいかな)。
ある日の稽古中に、キンちゃんが「今回のホン、オモシロくないですか?」と聞いてきた。ぼくは即座に「オモシロイですね」と答えた。14年の時を経て、「大逃亡」は確実にオトナの芝居に生まれ変わっていた。初演時にはニュアンスなんか無視して勢いまかせでやってしまった芝居だったが。その奥にはいろんなモノが埋まっていたのだ。30歳だったぼくでは今回の頼朝は多分できなかっただろう。芝居も成長したが、ぼくだってきっと成長したのだ。そして、十年目にしてこんなに烈しく、おっかなく、オカシく、みっともなく、でもやっぱりカッコイイ、そんなドラマができるほどに、ショーGEKIという集団だって成長したのだ、と思う。思いたい。

初演時と変わってないものの一つがメインテーマ曲(のメロディ)である。山本ヒロアキ作のこの素晴らしいメロディだけはどうしても外すことが出来ず、三好さんにアレンジをお願いした。新しい展開部分を得て、新しい曲として鳴っていたが、やはりあのメロディはいいな。
だが他の曲に関していえば、「ほうき星の歌」も「いい国作ろう」もぼくは今回の方が好きだ。特に「いい国作ろう」での大合唱は、これぞ大魔王というカタルシスを得ることが出来た。常連のお客さんたちも、チョット忘れてたのではないかな。

個人的に好きだったのは(ぼく以外にも多かったと思うけど)、安宅の関のシーンでのにわか歌舞伎。つけ打ちを担当したのはとーるであって、「なぜ?」と思われた方もいるでしょう。あれは実は与一の変装で……というのはまあ、完全なあとづけですね。しかし、あの高倉さんの百メートルダッシュのごとき全力疾走ぶりはスゴかった。若手のみんな、ああいうのはドンドン見習うべきなんだよ。
それにしても思い出されるのは初演時の安宅の関でのうっちいあすか(番人役だったのだ)。あの時の初々しさは奇跡的だったね。

かくして、ショーGEKIの十年目は幕を閉じ、我々は一つの通過点を越えた。そう、やっと一つの通過点を越えたということだ。さて、これからどこまで行けるかな。
「大逃亡」に関わってくださった出演者・スタッフの皆様お疲れ様でした。ありがとうございました。
「大逃亡」をご覧くださった皆様、ホントにありがとうございました。ショーGEKI、やっと10歳。人間にしたらまだまだ子供です。今後も成長ぶりを見守っていてください。再来年は中学入学です。
そしてショーGEKIの皆様、11年目もヨロシクね。

ではまた。多分年内はこれで最後と思われるので、どうぞ皆様よいお年を。