サーカス小屋の仮面舞踏会

2010.11.30

ショーGEKI大魔王「マスカラッド」が、おかげさまでさる11/23勤労感謝の日に、全9ステージの幕を閉じました。
ご来場下さった皆様、ホントにありがとうございました。千龝楽でのアンコール2回(つまりトリプルコール)、そしてお客さんも一緒になって(しかも振りつきで!)の「マスカラッド」大合唱なんて、役者人生初めての体験でした。キンちゃんは泣きそうになったそうです(ごめんなさいキンちゃん、バラシちゃいました)。

さて、ご存知の方はどれくらいいるのか知らないが、今回の「マスカラッド」も昨年の「大逃亡」同様に二度目の上演となる。
初演はなんと19年前の1991年! さすがにこれだけ間のあいた再演というのはぼくも経験がない。会場は、その当時期間限定でオープンしていたパナソニックのショールーム、新橋の東京パーン。ショーGEKIの前身であるツール ド フォース(以下「ツールド」)の二本目のミュージカルであった。
ではいつものように、当時のこととあわせて今回の公演を振り返って書いてみよう。

ショーGEKI主宰:羽広はもともと芝居ではなくショーがやりたかったという人で、ツールドの頃から「ミュージカルは金がかかるが、少なくとも二年に一本はやりたい」と言い続けていた。何よりやりたかったのは「ロッキー・ホラー・ショー」のようなキッチュなバカ騒ぎみたいな(客席も一体になった)ミュージカルで、ぼくもそういうのはキライでなかったものだから、そこから生まれたのが「バロック・ビザール・ブラザース(以下BBB)」という奇妙な奴らの登場する企画だった。

初演当時はとんねるずの「ねるとん紅鯨団」など、お見合いパーティ企画が流行っていたので、まあ、流行に乗った形で、話の舞台はお見合いパーティ会場と決まり、そこへ謎の集団BBBが登場し、パーティをシッチャカメッチャカに引っ掻き回すという話でいこうということになった。
初演時から19年経ったものの、いまや世間は婚活バヤリであり、ほとんどストーリーを変えずに再演ができてしまうということは、世の中そんなに変わっていないということなのだろうか。

昨年の「大逃亡」、一昨年の「ザンダルド」は好評をいただいたものの、ショーGEKIのモットーである「バカカッコいい」の「バカ」の部分が希薄になってきたのが羽広には不満だったのだろう、今年の演目をバカ騒ぎミュージカル「マスカラッド」に決めたワケだが、これを知った時のぼくの心境はややビミョーであった。少なくともヨロコビはしなかった。
19年前に一度体験してよくわかっているのだが、結局、なんたってこの作品で人気が集まるのはマダム・ディックとアミーゴ・ボッチなのだ。なのだが、19年前の、負けん気だけは強い若造だったぼくは、なんとか誰よりも目立ってやろうとしていた。
しかし、その時のドクトル・ジレイン(そう、当時もジレイン役だったのだ)は白塗りでもなく、衣装もあまりキチガイ博士らしくなく、歌のソロパートも踊りもなく、まあ一言で言って「地味」であった。またよせばいいのにBBB人気投票なんてことをやったりして、ジレインは最下位だったものだから、結構マジで落ち込んだりした。
そんな思い出のある「マスカラッド」だけに、再演が決まって大ヨロコビ、とはならなかったのだ。とはいえ、3度目の(そう、BBBモノには16年前に第2作があったのだ)ドクトル・ジレインをやることには抵抗はなかった。第2作で役を掴んだという実感があったからね。今回で別のアプローチをしようなどとはミジンも思わなかった(でも、以前のジレインを知っているお客さんからは「昔より腰の曲がりがアマくなりましたよね?」なんて言われたけど)。

今回の公演では、サントラ盤発売が決まっていたこともあり、芝居の稽古に先立ち歌の稽古からスタートした。
曲を作ってくれたのは、メンズのエイジアライブ以来のお付き合いとなる、ぼくの好きなバンド:FOOMOON。BBB登場のテーマ曲、そして主題歌「マスカラッド」を聴いた時「お、これは(今回は)いけるぞ」と思った。古きよきロックの香りがプンプンするサウンド(ギターとハモンドの絡みとかね)、通好みの変拍子(70年代プログレ風……と言っても多くの人はわかんないか)、そしてキャッチーなメロディ。どれもぼくにとってはどストライクだったのだ。

新しくなった台本をもらい、出演者みんなは今回の作品のテーマを羽広に聞いた。
「他者とマトモに向き合えないイビツな人間たちが、一歩踏み出そうとするまでの話。フリークス(異形の者)なのはBBBじゃなく人間たちの方なんだ」
初演時とは異なるテーマ……というより、初演時にはテーマはこんなに明確ではなかった。

稽古を重ねるうち、「いけるぞ」という思いはドンドン強まっていった。
初演時にはバカ騒ぎとしか思ってなかったこの作品は、実はシェイクスピアの「夏の夜の夢」のごとき祝祭劇の構造を持っていたのだ。登場人物の男女たちは、襲い掛かる艱難辛苦(それは一見バカバカしいものなのだが)を乗り越え、最後にはみんなから祝福される……あれ、こんな話だったかなあ。実にぼく好みではないか。

曲は二曲を残して作り替え。大きく様変わりしたのはボッチの歌かな。以前は眠り姫の歌との二部構成……いや、あの時は12月の上演だったから、エルフ歌う「きよしこの夜」との三部構成だった。今回は、ボッチの魂の叫びになってて、いやあ胸に迫るイイ歌だったなあ。
特筆すべきは、初演時にはなかった、三好さん作のエンガチョンのブルース。キンちゃんこんなに上手かったっけ?と驚いた。
どうしても変えられなかった二曲とは「ひとりぼっち見つけた」と「デブの歌(以前は『いつもクジラは悩んでる』というタイトルだった)」。この二曲だけは、どうにもこうにもメロディが素晴らしいので、アレンジのみ変えて披露することになったのだった。

そして舞台セット。イメージ画を見せてもらうと、おお、サーカスのテントだ!
サーカス小屋で繰り広げられるフリーク・ショー(奇形人の見世物)――そのフリークスとはモチロンBBBでなく人間たち――いいじゃないかいいじゃないか、ここらへんから、幕が上がるのが待ち遠しくなってきた。

(当たり前だけど)年々トシをとっていくショーGEKIメンバーをカバーしようとしてだか知らないが、今回、ゲストには若い人が多く、出演者の平均年齢は結構下がった。(二回り以上年下なんて子もいたが、さすがに「19年前は生まれてませんでした」という子はいなかった。ちょっとホッとした)
出演者が若いというためでもないだろうけど、今回はいつも以上の一体感と言うか、連帯感の中で稽古は進められた。全員一丸となって(それは出演者だけでなくスタッフも)作品作りに取り組んでいると言うのかな。こういう芝居がオモシロくないわけがないのだ。
ただ、今回はただの芝居ではなくミュージカルである。ショーGEKIとしては初のミュージカルであり、中心メンバーの半分はミュージカルを経験していない。芝居とミュージカルの間に存在する表現方法の差、みたいなものを体で理解するのが、稽古の最終段階であった。そしてそれはうまくいったのかな?

そして開幕。なんと初日から予想してなかったダブルコール。
本番に入っても、出演者たちはこの公演をもっとオモシロくできるのではないか、日々工夫を続けていた。ダンサーたちは当初予定されたよりも多くのナンバーを踊って、芝居までしてくれたりして。エルフも修ちゃんに追加で歌わされたりしてね。
そして初めにも書いたけど、千龝楽にはトリプルコール、会場全体で「マスカラッド」大合唱である。シアワセだったなあ。かくして「マスカラッド」は終わり。夢のようなサーカスのテントは畳まれたのであった。

スタッフの皆さん、お世話になりました。いつも以上に皆さんの愛をカンジました。ありがとうございました。
そしてメンバー含め全出演者のみんな、お疲れ様でした。タノシかったねえ。お世話になりました。
最後に、ご覧下さった皆様、ホントにホントにありがとうございました。皆さんの胸にこのニギヤカな夜がいつまでも残っていたらシアワセです。

そして、ショーGEKIは次回もショーGEKI大魔王として、ついに本多劇場に進出です。演目はショーGEKI代表作の一つ「新撰組」。今回は「維新士」との裏表2バージョン上演ではなく、「新撰組」のみの上演です。どうぞ皆様おタノシミに。

では、今年はこれにて。次回は多分「新撰組」の後に。