サーカス小屋の結婚式

2012.12.3

ショーGEKI大魔王2012年公演「マリオネット〜バロック・ビザール・ブラザーズ(以下BBB)の逆襲」が、おかげさまで去る11月25日に全12ステージの幕を閉じました。ご覧くださった皆様、ホントにありがとうございました。
開演前の振り付けがマンマと効を奏し、カーテンコールでは会場中のお客様に踊っていただいて、出演者一同カンゲキしておりました。ザンネンながらご来場いただけなかった皆様、来年はどこかでお会いできればと思います。

さて、今回のこの「マリオネット」、あくまで正確を期すならば、18年ぶりの再演となる。
初演は1994年1月(ああ、おのまさしまだ20代!)、玉川高島屋S.C.アレーナホールにおけるフェスティバル「たまがわげき‘94」の参加3作品のひとつであった。フェスティバルのテーマは「演劇と映像との融合」であって、(当時ツールドフォースであった)我々は、ここで「マスカラッド」に続くBBBものの第二弾をやろうと考え、BBBが結婚式場から花嫁をさらう話になったのである。なぜ「あくまで正確を期すならば」などというカタクルシイ書き方をしたかと言えば、今回の「マリオネット」が、もはや再演とは呼べないような、ほぼ新作同様の作品に生まれ変わったからだ。

18年前の「マリオネット」は「演劇と映像との融合」というシバリがあったこともあり、さらわれた白い花嫁は舞台上のスクリーン(ライブ映像)の中に閉じ込められたまま、白い花婿(おお、18年前の鈴木とーる!)が花嫁を探し回るうち、花嫁がどんな女性だったか忘れてしまう、という話だったのだが、今回、演出の羽広は何を思ったか「花嫁を主人公にした話にしたい」と言い出したのである。

当然、我々メンバーは思った。「誰がヒロインをやるんだ?」

そうなのである。20代で、ヒロインを演じられる女優がいないのである。ショーGEKIはそうなっちゃったのである。あすかやあけちに10歳若い役をやらそうったって無理はあるのである。そこで、久々にオーディションをやった。かつて、「三剣士」の時に行ったのと同様、主にヒロインを探すためのオーディションである。あの時は幸運にも三浦利恵という女優を得ることができたのだけど、ヒロイン(それも歌って踊れるヒロイン)なんてそう都合よく見つかるものだろうかと心配していたのだ。
我々はよほどヒキが強いのだろうか、今回幸運にもやってきてくれたのは元宝塚歌劇団の麻尋えりかさん。この得難いミュージカル女優を得てから、演出:羽広の中のヒロイン像はさらに具体化されてきたのではないか。

18年前とくらべてもう一つの大きな違いは、アミーゴボッチの存在である。「マスカラッド」初演ではボッチは人間に戻れたので、「マリオネット」初演には当然出てこなかったのだが、2年前の「マスカラッド」で完全にBBB入りしたアミーゴ廣田ボッチは今回も登場。自分に自信が持てず、永遠の愛を誓えなかったヒロインにシンクロし、常にヒロインに同行するという要のキャラクターとなった。このスタート地点から、まったく新しい「マリオネット」は動き出したのである。

初演時とくらべいろんなところが変わったが、ほとんど変わらなかったのは「歌詞」である。
ぼくの手元には、18年前お客さんに配布した歌詞カードがあるのだけど、オモシロイくらい、初演時と歌詞が変わっていない。初演時は、マスカラッドでも歌われた「いつもクジラは悩んでる〜1pデブの歌」を含む12曲だったが、今回はこの歌を除く11曲。歌うキャラクターは違っても(たとえば、初演で「あ・い・た・い」を歌ったのはマダムディックだった)、ストーリーは違っても、歌詞はほとんど変わらない(一番違ったのは、ブラッドの子守歌と、以前はなかった「花嫁市場」での白い花嫁のパートぐらいかな)。これはどういうことかと言えば、歌がドラマに先行して存在しているということだろうか。歌だけをつないでもストーリーが見えるのだ。

18年前の初演時、実はぼくはひそかに不満を持っていた。「曲数が多くてハナヤカなのはいいけど、ストーリーは少し希薄なんじゃないか」と。
今回、その不満は見事に解消された。それは、ストーリーが充実したことによるのではなく、ミュージカルとして確実にレベルアップしたことでだった。演出:羽広と作曲:藤川さん二度目のタッグは、ロックからフォーク、C&W、ラップと、「マスカラッド」以上にバラエティ豊かでしかも美しい曲の数々を生み出した。主にダンスナンバー担当の三好さんはこれまで以上に確かで、力強く、カッコイイ曲を持ってきてくれた。そして何より、それを歌う側・踊る側の力量が、演者をフォローしてくれるスタッフワークが格段にアップした。そうなのだ、なにを今さらだけど、これはミュージカルだったのだ。
今までのショーGEKI大魔王を観て、たしかに歌も踊りもあるけど、一般的に言われるミュージカルとはなんか違うなと思ってたお客さんは少なくなかったと思う。ぼくもそれはわかってたから、便宜上自分たちはミュージカルと呼ぶけど、芝居なのかミュージカルなのかなんなのか、最終的な判断はお客さんに委ねていた。「マスカラッド」の時でさえそうだったかも知れない。だけど今回は違う。ぼくらはまごう方なきミュージカルをやったのだ、と胸を張って言える。こんなの、初めてのことだ。

内容についても少し触れないといかんかなf^_^;)では、ご覧いただけなかった方のためにあらすじを。
結婚式の最中、いざ誓いの言葉を口にする寸前になって不安になった花嫁(麻尋えりか)のココロをかぎつけ、「愛がほしい…‥」のつぶやきをキッカケに飛び出してきたBBBは、前作「マスカラッド」同様に式進行を乗っ取って、新郎新婦に永遠の愛の誓いを迫る。不安になって「永遠なんて誓えない」と誓いを拒んだ花嫁は.BBBによって花婿(辻崇雅/宮脇タケシ Wキャスト)と引き離される。
ここまでは初演と一緒。ここからは花嫁と花婿がお互いを探し求めてさまよう話が、主に花嫁の視点で展開する。
やっと再会できたと思ったら、花婿のそばには赤黄青の3人の花嫁(末冨真由・菊池千花・藤井歩美/六川裕史・竹内美保・湯本真由 Wキャスト)がベッタリくっついていて、話はややこしくなる。かと思えば、心の底ではわが子を結婚させたくない花婿の母(吉川亜州香)、花嫁の父(金田誠一郎)がBBBによって黒い花嫁・黒い花婿に変身させられ、心のおもむくままに子供たちにアタックする。はたして、花嫁と花婿は結ばれ、永遠を誓えるのか?……

というのが一応のストーリーなのだが、そこに絡むはストーリーテラーならぬストーリーバスターのBBBであり、劇中でもかまわずお客さんと雑談したりアソビ放題。ただまあ、こういうのはやりすぎるといかんので、その匙加減には気をつけた。

このストーリーの随所に散りばめられたのが、さっきも書いたように、バラエティ豊かで美しく、そして「マスカラッド」の時よりダークな曲の数々である。ぼくはどの曲も好きだが、特に、陰のある「花嫁さんがころんだ」とそのメジャー調「白いブーケの歌」が好きだ。「白いブーケ」の方はドクトルジレインの骨董屋(いつしかそんなシーンになった)で歌われるので、あのシーンは好きだったな。そして何より、クライマックスでボッチと白い花嫁が歌う「あ・い・た・い」。曲自体、ここ数年で聴いたバラードの中で一番好きだけど、あのシーンのカタルシスは、ミュージカルでなければ得られないものだろう。
羽広演出は、「ひとつのミュージカルナンバーが終わったら、全員で次のナンバーを目指せ」というものだったが、これは決して芝居パートをないがしろにしてるわけではなく、各ナンバーが生み出すスピード感やテンポと無関係に芝居をするなということであり、この意識は結構浸透してたのではないだろうか。

かくて「マリオネット」はショーGEKIが初めてやったかもしれない本格的ミュージカルとして、その幕を閉じたのである。とある演劇サイトの口コミランキングでは「ライオンキング」を上回って第一位になった、なんてことも聞いた。ウレシイなあ。
出演者の皆さん、お疲れさまでした。皆さんと一緒にタノシイ時間を過ごすことが出来て、ウレシく思います。かなうことなら、是非またご一緒したいです。
そしてスタッフの皆さん、お疲れさまでした。大変お世話になりました。中には、大劇場のミュージカルの現場をふってわれわれについてくださった人もいて、感謝の言葉もありません。
そしてそして、「マリオネット」をご覧いただき、愛してくださった皆様、ホントにありがとうございました。かつてないシアワセな体験をさせていただきました。今後、もっともっといい作品を作っていきたいと思いますので、幾久しく(結婚式っぽいね)ヨロシクお願いしますm(_ _)m

ではまた来年。どうぞタノシイクリスマスを、そしてよいお年を。