教室が飛んだ日

2014.11.29


ショーGEKI大魔王2014「飛ぶ教室」が、おかげさまで去る11月24日に全8ステージを終えました。
ご覧くださった皆様、ホントにありがとうございました。ザンネンながらご覧いただけなかった皆様、来年2月の「セイムタイム、ネクストイヤー」でお会いしましょう(^_^)

今回も公演を振り返って書いてみる。
今回の「飛ぶ教室」の企画を初めて聞いたのは今年の初めだったろうか。ショーGEKI初の学園もので、タイムスリップして出演者全員が子供を演じる、と聞いて正直俺は「イヤだな」と思ったものだ。大人が子供を演じるなんて見苦しくて、俺が客だったら一番見たくないタイプの芝居ではないか、そう思って危ぶんでいたのだ。
その危惧がかなり払拭されたのは初の読み合わせの時。台本と、これは初めてのことだが各キャラクターの設定表を各自もらい、「あれ、これはなんかオモシロイかも」と思ったのだった。

主人公は自閉症の童話作家・相羽真守(鈴木とーる)。なぜかいつも「(午後)4時47分」という時間を気にしている。
舞台は相羽が通う定時制高校4年生の教室。下は18歳の現役から上は48歳の元証券マン(これ俺)までさまざまな生徒たちがいる中、相羽は授業中だというのに時折奇声を発し、走り回り、歌い出す。しかしそのことが生徒たちにとってはすでに日常と化している。そればかりか、相羽の存在がキッカケとなり、生徒たちはお互い同士に説明のつかない「つながり」を感じるようになっていた。
ある日の夕礼、いつものように相羽は担任の和光賛治先生(日野陽仁)に尋ねる。「はい先生、今は4時47分ですか?」
その時、クラスの副委員長・生駒ゆゆ(廣田朱美)が「そうよ」と答える。日常が破れた。そしてクラス全員の、実態のわからない期待を受け和光先生も答えた。「そうだよ、相羽くん」
その途端に、教室が時空を超えた。
辿り着いた先は和光先生の若き日。そしてクラス全員はなんと小学生(見た目は変わらないままの小学生)と化し、若き日の和光先生に何が起こったかを目撃する。これが彼らの過去への飛行の始まりだった……

ざっと出だしだけ書いてみたが、要はクラス全員が自分の一番多感だった少年少女時代にタイムスリップするのだ。そして彼らの説明のつかない「つながり」とは、クラス全員が同じクラスの中に、自分にとって忘れられない子とそっくりな人がいるということ(それもなんと出席番号順につながっている)。

奇跡、というにはあまりにも出来過ぎだし、そもそも自分の知ってる子に面影が似てるというだけで、それを「つながり」と呼べるのか?
という批判の声は当然あると思うけど、俺はそれでもいいと思う。俺は今回のこの芝居がとても好きなので徹底的に弁護する。オモシロければいいじゃないか!(^_^)

今回の芝居の最大の趣向はもちろん「大人たちが小中学生を演じる」こと。なのでシーンも、小学校でのフォークダンスあり運動会あり掃除の時間あり、中学校の部活あり男女交際あり不良のケンカありと、とにかくめまぐるしく変わっていく。羽広演出の目的は「アルバムをどんどんめくっていくような芝居」を作ることにあった。
これら学校での数々のイベントの中で、定時制の生徒たちはみな、自分にとって忘れられない体験(「他の記憶と繋がらない記憶」)を再体験させられる。しかし体験させられるだけで、その過去を変えることは出来ない。繋がらない、つらい記憶をまた味わうのみ。そして相羽はひとり、さよならを言うことも出来ずに別れてしまった少女・蓬莱マチ(吉川亜州香)を探し続ける。マチに会うことが出来たら、それは記憶を変えることになる。記憶を変えることが出来たら、その人はどうなってしまうのか? その謎は、話の進行とともに徐々に明かされていくことになる。

この辺で自分の役についても書こうかな。
合羅(ごうら)健太郎48歳。IQ160の天才。とある理由から高校には行かず、学歴を詐称して中卒で証券会社に入社し、それがバレて退職するまでの25年間で150億稼いだという、なかなかスゴイ人(^_^)
劇中での役割としては、SFやファンタジーには欠かせない、謎を解明しストーリーを進行させる人である。オフィスワンダーランドの「賭博師 梟」やネオゼネレイター・プロジェクトの「Desert Moon」での役回りに近く、こういう役が俺には合っているのかも。
そして俺も出席番号で二人の人とつながっている。主婦の嘉門浩実(五十嵐絵里)の記憶の中では心臓病の少年・倉田和夫として登場。結局この少年は手術が失敗して命を落とし、それを知った同じ病気の彼女は長年手術を拒否し続けることになる。
中学時代の合羅少年の記憶に登場するのはバレーボール少女・桐野リナ(谷貝里緒菜)。天才と呼ばれていた合羅少年は彼女の言葉に初めてのショック(敗北感、ではないな。やはりショック)を受ける。「天才なんて呼ばれてても、自分はただのモラトリアム小僧じゃないか」(なんてセリフはありませんが)
ミノルがこのシーン見て「ジブリの映画みたいだった(おの注:宮崎監督じゃないやつだね)。おのさん美少年風だった」と言ってくれた(「もうちょっと痩せてりゃいいのに」とも言われたけど)。映像の高橋くんにも「少年になってましたね」と言われた。50歳寸前のおっさんが少年に見えたというのであれば、これはもう自分だけの力ではない、相手に助けられたということですね。里緒菜ありがとう。俺は中高と男子校だったので、あれに近い経験すらしたことがなかったのだが、ホントにあのシーンの間だけは少年になれた気がしたのだ(^_^)
小学生姿もそう。ショーGEKI恒例のオールキャストでの歌とダンスのシーンは今回撮影OKで、お客さんが撮ってくれた写真を見せてもらったのだが、久々に自分の写真見て赤面してしまった。(とーるには「おのさん…小学生ですね」と感心されたけど)あれだって、あの歌とダンスが、そして芝居の世界そのものが、俺を小学生の顔にしてくれたのだと思う。
ちなみに、合羅少年が読んでいた本はケストナーの「飛ぶ教室」でした。我々の芝居とは全然違う話ですが、名作だと思います。合羅少年の愛読書という設定でした(^_^)

大魔王初のココロミとしては、ベテラン俳優・日野陽仁さんを迎えたこと。北野映画やドラマなどで活躍されている日野さんも元はといえば、我々の先輩格にあたる劇団ランプティ・パンプティのメンバーだった、小劇場出身の俳優である。
何人かのお客さんに「おのさんが先生かと思ってました。」と言われたけど、日野さんの先生役での出演はかなり初期に決まっていたこと。俺も生徒役でよかったと思う。日野さんのあの味はチョット出せないし、それになにより、生徒役ならばこそ、あんなにたくさんのクラスメートができたのだから(^○^)
ラストで和光先生が「いいえ、今は5時35分だよ。」というセリフ。あんなに聞いてホッとしたセリフは今までなかったなあ(^_^)

かくして、我々の飛ぶ教室はそのすべての飛行を終えたのだった。
ショーGEKI大魔王として何本もの芝居をやってきた我々が、年齢が上がったことによりひとつの転換期を迎え、そこで生まれたような「立ち回りなし・ダンサー不在」の大魔王公演ではあったが、俺は今回のこの芝居がとても好きだ。これだけ長いことやってきて、今また大好きな芝居が一本できたということが、素直にウレシイ。
共演者のみなさん、どうもありがとうございました。おかげでとてもタノシイ時間を過ごせました。
音楽の三好さん、振付のkaoruちゃん、映像の高橋君はじめスタッフのみなさん、大変お世話になりました。
そしてそして、ご覧下さった皆様、ホントにありがとうございました。ショーGEKIは今、過渡期を迎えているのに違いありません。それはやりなれたスタイルを捨て、あらたな物を獲得しようとする時期ということで、産みの苦しみから試行錯誤することもあるかと思います。あたたかくまたキビシク見守っていただけたら幸いです。今後とも、ショーGEKIならびにおのまさしをヨロシクお願いします。

ではまた来年、できましたら2/27〜3/8(中休みあり)の「セイムタイム、ネクストイヤー」でお会いしたいと思います。久々の翻訳劇、しかもオトナの男女の二人芝居です。ぜひご覧ください。
楽しいクリスマスを。そしてよいお年を。